臆病者のおっくんです。
失敗と挫折だらけの人生ですが、実際の経験によって得た知識を同じような悩みを抱える読者の皆さまと共有したいと思います。
今回は、おっくんが社会人5年目のから約2年間経験した労働組合の活動に関する内容です。
何を隠そうおっくんは、勤務先で組織されている労働組合(組合員数1,000人超)の役員を1期2年務めたことがあります。
ちなみに労働組合の活動は、新卒で社会人になってから10年以上一貫して従事している人事・労務の仕事にも密接に関係します。
この記事は以下のようなサバイバル環境に身を置かれている方々向けの内容です。
この記事の想定読者は?
・これから役員の改選によって労働組合の執行部に入る人
・新入社員でこれから労働組合に加入する人
・人事・労務部門に勤務をしている人で、労働組合の本質を再確認したい人
1.労働組合とは(一言で・・・)
労働組合とは、法律や労働組合活動経験を踏まえて考えるに「労働者の組織する団体又はその連合団体」と理解していれば実体から大きなズレはないと思います。
ちなみに労働組合は略して労組(ろうそ/ろうくみ)と表記されることが多いので以下それに倣います。
2.役割
労働者に関する基本法として、労働基準法、労働関係調整法、労働組合法がありますが、このうち労働組合法には、労組の役割として「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ること」と規定されています。
3.組織構成
(1)歴史
労組の歴史をたどると、18世紀半ばに始まった産業革命によって労働者が厳しい環境下で働かされたり、突然解雇されていたりした中で、労働者の中に不満が広まり、待遇の改善を求める運動を起こしたことが起源となっているようです。
(2)階層
現在の労働組合は、全国レベルの中央連合団体をトップに階層化がなされており、そのトップの団体をナショナルセンターと呼びます。
日本最大のナショナルセンターは日本労働組合総連合会(通称:連合)で、その傘下には産業別(サービス/自動車/電機/情報通信等)の連合団体(通称:産別)が組織されています。
この産業別連合団体に加盟しているのが各企業/団体ごとに組織された単位組合(通称:単組=たんそ)です。
通常、労働者個人が加入するのはこの単組となります。
単組には、事業所単位の支部(及び執行部)が置かれることもあります。
(3)役職
上記連合団体及び単組には、執行委員長、副執行委員長、書記長の三役と役付きでない執行委員が複数名置かれていることが一般的です。
これらの構成員を総称して執行部と呼び、執行部のアシスタントとして書記というポジションもあります。
中でも、書記長は各組織の活動の要となって、執行委員の指導、一般組合員からの相談、執行委員長・副委員長の補佐を行います。
ちなみに、おっくんが就いていたのは上記の中で執行委員のポジションで、おっくんはこれを会社の仕事を続けながら行っていました。
このような活動の仕方を非専従と呼びます。
これとは逆に会社の仕事を休職して、労組での活動に従事することを専従と言います。
おっくんの所属していた組織では、執行部7人のうち委員長、書記長、執行委員2人が専従役員として活動をしていました。
4.活動内容
労組の具体的な活動の例をご紹介します。
(1)春季生活闘争(春闘)
春闘の交渉の議題となるのは、主に賃金や賞与ですが、その他労働条件についても話し合われます。
労組の役員は、労働者の代表として一般組合員の意見を集約し、会社に届けられるよう努めます。
ちなみに、会社側の人事・労務部門では春闘ではなく、春季交渉という言葉が使われるのが一般的です。
(2)労使協議
春闘以外で行われる社内/事業所内での労使協議も労働組合の活動の一つです。
経営状況、人事制度の適正運営、福利厚生、労働時間等に関する事項について確認・話し合いがなされます。
(3)組織内の機関運営
労組の活動は、組織内の機関での意思決定に基づいて行われます。
おっくんの所属していた組織では、事業所内の各職場の代表として数名の職場委員がいて、職場委員の出席する支部委員会において、執行部が行う報告や提案に対する確認・承認がなされていました。
(4)共済
労組には労働者間の連帯と助け合いの精神が根付いています。
そのことがよく表れた活動として共済活動があります。
共済とは、基本的には保険と同じ役割を果たすもので、万が一の事態に備えて掛け金を定期的に支払い、補償を受けられるように備えておく仕組みです。
ただし、金融庁が監督の下、営利活動として行われる保険と異なり、共済は厚生労働省の監督の下、非営利活動として行われます。
したがって、共済は組合員を対象に組合員同士が加入を勧め合うものとなっています。
(5)政治/選挙
労働者の抱える問題は、労使の協議だけでは解決できないものもあります。
労働者の生活に密接に関わる医療・福祉・年金といった社会保障の問題は国政や地方政治の中で解決を図るべきものです。
この意思形成の過程に労働者を送り出すべく、労組は積極的に政治/選挙活動を展開します。
(6)相談窓口
セクハラ、パワハラ、コンプライアンス、処遇、家計等、労働者は仕事をし、生活を送る中で様々な問題に直面し得ます。
その時に労働者が気軽に相談できる先の選択肢として労組があります。
労組には長年にわたって多くの労働者の直面してきた問題の解決に携わった経験が豊富にあり、困難に直面している労働者に寄り添ってくれる存在です。
5.よくある質問
(1)労組に入るのは義務なの?
多くの日本企業では、ユニオンショップ制が採られ、当該企業に採用された者は一定期間内に労組へ加入すること、及び当該労組から脱退する場合には解雇されるということが規定されています。
このような規定は、労組側にとっては組織力の強化、会社側にとっては労使協議の相手先の集約といったメリットがあり、広く浸透しています。
これにより、多くの日本企業において(特に正社員は)労組への加入は事実上義務となっています。
(2)労組の活動資金源は?
労組は組合員から組合費を徴収して活動の資金源としています。
活動収支については、組織内の機関での報告・承認が適正になされる必要があります。
6.やりがいを感じる点&つらい点(役員として)
(1)やりがいを感じる点
やりがいを感じる点は、以下のとおりです。
・多くの一般組合員さんと部門の垣根を越えて知り合うことができる。
・共済、政治/選挙といった活動を通じて社会勉強をすることができる。
・会社の人事制度/賃金体系/労働時間等のワークルールに詳しくなる。
(2)つらい点
つらい点は、以下のとおりです。
・会社側経営幹部を相手に協議の中で意見することも求められ、緊張する。
・一般組合員全員が労組の活動を必要と思っているわけではない。
・非専従役員の場合、業務との両立が容易でない。
7.向いている人&向いていない人
人と関わるのが好き、人のためになるような活動が好きという方は労組の役員として活動することに向いていると思います。
逆に人と関わることが苦手という人は、一般組合員の声を拾って寄り添うという活動がままならず、ストレスに感じてしまうことが多くなると思います。
8.今後の展望
日本経済の成長期には、企業から少しでも良い労働条件を勝ち取ることこそが労組に期待される最も大きな役割であったものが、現在、企業は国際競争にさらされ、労働者もよい労働条件を勝ち取ることよりも雇用自体を守ることが重要と考えるようになってきています。
また、人々の働き方も多様化し、在宅勤務の推進、ジョブ型人事制度へのシフト、ギグワーカーの増加などが見られます。
こうした変化の中で、労組に求められる役割とは、役員自らが労働者のロールモデル、プロフェッショナルとなること、及び働く仲間の中に多くの同じような存在を作り出すことへと変化してきていると感じます。
したがって、今後の労組には、
・変化する労働法制の労働者にとってのメリット/デメリットの共有と意見集約
・生活基盤の安定化/職場での活躍に向けた社会保障制度・会社制度の理解/上手な活用法の浸透
といった役割が強く期待されると考えます。
20年7月5 日